web制作の基本

CSS Nite 手を動かす前に考えておくこと-part6

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10人のweb制作会社が代理店に頼らず、自社サイトだけで年間400件超の依頼を獲得するまでに実践したこと

“web戦略に関してはケースバイケースなことが多いため、実践あるのみ。直接数字になっていなくても間接的に成果に繋がっているページも含まれるため、クライアントワークに関しては成果が分かりづらいことが多い。”

枌谷さんは立ち上げ当初から、web制作会社であるならばwebで集客している実績をクライアントに提示していくことを意識し続けてきたそうです。また、自社の集客に関してはこだわりをもってすすめておられるそうです。

NTTデータからweb制作会社に転職された後、起業されたそうですが、28歳までweb業界とはそれまで関わりがなかったそうです。中途で入社された枌谷さんはディレクター・システム開発など多くの経験を積み、現在はwebデザイナー兼ディレクターとして活躍されています。
中でも、フリーランス時代に枌谷さんが一番問題と感じたのが新規顧客を獲得するのがいかに難しいかということだったそうです。また、新規顧客を獲得したとしても顧客層を広げていくのも難しく、下請け業務を行うことも多かったそうです。

そして現在は10名程の会社となりましたが、元々、クリエイターが多い会社であるため、営業面で強くはないようです。
しかし、自社サイトで400件超もの反響を獲得していることから組織としては強いのではないでしょうか。ではどのような経緯を辿り、現在に至ったのか紹介していきたいと思います。
創業2010年から問い合わせ数を記録していったそうですが、最初の3年間はほとんど問い合わせがなかったそうです。

問い合わせ数は下のようだったそうです。
2010年 11件
2011年 15件
2012年 32件
当初からSEOに強いサイトを意識していたそうですが、問い合わせ数の伸びに悩んだそうです。ところが、2013年から問い合わせ数が3倍に伸びたそうです。枌谷さんは、おそらくGoogleアルゴリズムによる変動だと捉えていました。
そして、この時期を境に直取引が増え始め、更には去年の末にwebサイトをリニューアルした結果、問い合わせ数が400件を超えたそうです。
創業から約7年ですが、このように成長した理由として独自の考え方を重視しているからなのではないでしょうか。ここまでの話からクリエイティブ色の強い会社なことがなんとなく伝わってきました。

枌谷さんは経営戦略とマーケティング戦略を分けて考えているそうですが、最初に経営戦略に関して説明していきます。

経営戦略とは

経営戦略とマーケティング戦略の違いとは、経営戦略は資本の拡大を目的としているのに対し、マーケティング戦略は顧客の拡大を目的としています。同じ戦略ですが、少し視点が違います。
経営戦略を構成する要素としては
・ミッション
・ビジョン
・バリュー
・経営の基本方針

だそうです。それではここでいう4つの意味に関して少し解説していきます。
まずはミッションから。
・ミッション
(例)
Amazon オンライン上であらゆるものを発見できて購入できる
Facebook より多くの人と繋がりシェアすることで人々の力を与える
Google ワンクリックで世界の情報にアクセスできる

殆どの企業が会社の理念として持つ、端的にいうと社会的使命のようなものでしょう。
ちなみに株式会社ベイジは“デザインでビジネスを改善する”ことをミッションとして掲げているようです。

・ビジョン
主に長期的な目標をビジョンとして掲げている企業が多いそうですが、枌谷さんは短期・中期・長期の3つに分けて考える必要があるとしていました。

端的にいうと“自分たちはどうなりたいのか”という話です。
長期的なビジョン・・・長い目でみてどうなりたいか
中期的なビジョン・・・5年後などそう遠くはない未来 自分がどうなっていたいか
短期的なビジョン・・・1年以内にどうなっていたいか

特に小さい会社は短期的なビジョンが最も重要だそうです。何故なら、小さい会社ほど大きい会社と比べて比較対象とするものが少ないため、短期的な目標がなければマーケティング戦略を立てるのが難しいからだそうです。

・バリュー
ここでいうバリューとは価値観や姿勢のことを指します。バリューはやがてサービスの質・寿命につながります。
ここで、当たり前のことを“バリュー”とするのではなく、人とは違う考え方を“バリュー”としているそうです。
人とは違う考え方をバリューとするというのは、例えば業界のリーダーがやっているビジネスと全く違うことをするということです。
現在はそこまで意識しなくなったと述べていましたが、創業当時は競争戦略をとっていたそうです。
*競争戦略とは、一つの業界において有利な市場を確保するために他社とは異なった独自の戦略行動を選択し、自社のポジションを改善することを指します。
そして下のように述べていました。
“企業ごとに強みとなるものは異なるので、業界のリーダーがやっているビジネスをやるのはそもそも得策ではない。例えば、企業によってはシステムに強い会社もあればデザインが強い会社もある。あるいはサービスそのものではなく、対応がいいとか体制が整っているなども強みとしてあげられる。このように、企業によって強みとなるものは異なっているので、後発であればあるほどいずれ差別化ができなくなり廃れていってしまうのが目に見えている”
からだそうです。
特にweb業界は競争因子が多く、企業によって競争因子とするべきものは違って当然。
営業が殆どいない会社であったため、企業の方針としてはコストを下げる戦略ではなく、サービスの質を重視する戦略をとっていたようです。
事業を多様化するよりもまずは一つの軸となる強みに特化するほうが長い目で見ると成功する確率が大きいと考えていたのでしょう。(分散型事業ではなく、特化型事業)

また、一つの業界内には複数企業があり、パイオニア的存在の企業もいれば、当然それに追従していく企業も存在します。一般的に以下の4つに整理することができます。
チャレンジャー
リーダー
フォロワー
ニッチャー

立ち上げ当初は、自社よりも力のある会社の後を追っていく“フォロアー”として戦略を立てつつ“ニッチャー”か“チャレンジャー”の地位を目指していくスタンスをとっていたそうです。

クライアントワークに関して
クライアントワークに関しては、web制作会社であるため自社で行った施策内容を提案する戦略をとっているそうです。つまり、クライアント側のミッションなどを作成したりすることは殆どなく、どちらかというとお客様にヒアリングし整理してあげるスタイルのようです。

経営戦略に関して
経営戦略に関しては、自社でできないことを代理店に外注するのではなく、自社の強みを生かすようサービスの内容にこだわることを意識されていたそうです。

“経営戦略があった上でマーケティング戦略”
マーケティングの基本構成要素は一般的に下の3つだと言われています。
S(セグメンテーション)
T(ターゲティング)
P(ポジショニング)
上の3つに加えて“強み”と“ブランド”を加え整理して考えているそうです。
“マーケティング戦略に関しては少々あいまいになってしまうことが多い。”
例えば、企業がもつブランドを少し変えてしまったら強みを少し変えなければならないなどとあいまいになってしまいがち。
こういった現実があった上で分かりやすく順を追って説明していくというスタンスをとっているようです。よくありがちなのが、業界内での自社の立ち位置をセグメント化できているのはいいが、結局強みが分からないため落とし所が分からないというケースだそうです。
やはり起点として自社の強みがないと話として始まらないため、強みを明確に定義していくことは重要だそうです。

“自社の強みが分からないと戦いようがない”
SWOT分析は情報を整理するのに向いていることから、強みを分析するために用いられる手法だが、アイディアが出てくることはあまりないそうです。
スタンスとしては、お客様が強みを持っているにも関わらず整理できていないときに用いるのが効果的といえるのかもしれません。

“クライアント側の課題に対しては、曖昧になりがちですがクライアントが知りたい情報を詳しく聞き出すことが重要”
クライアントによっては前の制作会社に対する愚痴を話す場合があったりするが、それがヒントとなることもある。つまり、お客様が本心で思っている不満。
“こちらから指示しないと提案してもらえなかった”や“デザインは悪くないがマーケティングのことは一切考えてくれなかった”などの言葉も顧客の詳細を聞き出す上では重要とのことです。そして、上にあげたようなクライアントの不満を埋めていく形で解決策を提案しているそうです。

“自社の強みが分からないクライアントもいるが、切り口を変えると強みといえる”
例えば、コーポレートサイトを作るのは苦手だが、ランディングページ制作はうまい会社もいればまた、その逆も然り。
商材の種類を変えれば同じスキルでも強みになったりすることもあるとういことでしょう。その他にもターゲットの年齢層を変えたりと、やりようはいくらでもあります。

“強みとは、あるものを見つけるのではなく作る感覚を意識することが大切”
最初から強みが何なのか探すのではなく、自社でできることのなかから作っていくことが重要なようです。B to Bに強い制作会社ですが、B to Bの仕事をしているうちに自然に身についたものではなくB to Bの会社に向けて打ち出そうと決めセミナーやイベントに参加したりして情報交換を行ったそうです。
そして、自社の強みを作りつつ、セグメント化・ターゲティング・ポジショニングで自社の立ち位置を分析していくことが重要だそうです。

“企業がこう思って欲しいことをお客様にも思ってもらうことがブランディング”
ブランディングで一番重要なのがブランディングファクト。やはり自社で実績がないと、戦いようがないということでしょう。
強みとして出していきたいもの以外打ち出さず、一番打ち出したいものをブランディングしていくほうがブレることがないためうまくいくとのことです。まずはイメージに集中するほうがいいということでしょう。

マーケティング戦略のセグメンテーションとターゲティング
クライアントから貰った資料にはセグメント化されたデータなどを貰うことがあるそうですが、段階的に考えることが重要だそうです。
“第一の段階として業界ニーズを把握する”
お客様によってはコンサル会社に依頼したいこともあれば代理店に依頼したいなど、ニーズは様々。

“第二の段階は顧客属性”
クライアント側がB to BなのかまたはB to Cなのかを把握する。

“第三の段階は予算規模”
マックス金額とミニマム金額を決める

“第四の段階はターゲット層を明確にする”
クライアントによってはランディングページを狙いたい会社もあれば、そうでない場合もあるように、クライアントによって求めるものは様々。

“第五段階は何のメニューか明確に”
クライアントによっては制作・コンサル込みで施策を行って欲しいところもあれば制作だけして欲しいところもある。あるいはUX面での改善など様々。
現在は上のようにセグメント化しているようですが、創業当時は特にクライアントを絞ることなく制作全般を手がけていたそうです。
これが先ほどの“強みを明確にする”ということなのでしょうか。自社の強みは何なのか手探りで探した結果、強みが見つかったということでしょう。

“最後はポジショニング”
自分たちはクリエイティブ寄りの会社なのか、ビジネス寄りの会社なのかを明確にした上でポジショニングをとっていくことが成功への鍵のようです。競合を分析し、他社の特徴を把握しできるだけ競合が存在しない方向性を目指すということなのでしょう。

“web業界はビジネス寄りになってきている”
業界全体がビジネス寄りになっているため、競合がいないということは殆どない。B to B向けに打ち出すことで競合がいないフィールドへとポジショニングできているとのことです。

“切り口を変えることもポジショニングの一つ”
とはいえ実際に戦わないでいいエリアはないと考えた方がいい。実際にブルーオーシャンの市場は儲からないことが多いため、独自の切り口を見つけた方がいいそうです。
その中でなるべく競合が少ないところへ傾斜していくのがいいということなのでしょう。

マーケティング戦略をまとめると
・強みを考え続けた
・強みを磨く行為を怠らない
・強みをイメージにしていく
・強みを生かせる相手探し(セグメンテーション化)&ポジショニング

マーケティング戦術

“理想論ではダメ、成功企業の真似もダメ”自分の強みとは何かを考え抜くことを貫いているそうです。

顧客層は下のように分けることができますが、労力に対して成果が見合わない会社も少なくないそうです。
どういうことかというと下の図のうち、課題形成前の企業に対してSEOやリスティングを提案する会社は少なくないそうです。つまり、サービスに対して未認知の段階でマーケティングに落とし込もうとすると成果に見合わず労力だけを消費してしまうということです。

また、こういった顧客に関してはサービスについて全く知らないため最初のコンバージョン次第で決まってしまう。この手法をとってしまうと後々辛くなるとのことでした。

もともと従業員数もそれほど多くはなく、資金が潤沢にあったわけではなかったようで自社の強みを前面に押し出すという手法をとり、見込層へ絞り込むことを徹底したようです。

課題形成前のクライアントを相手にするときの注意点
“優秀なweb制作会社と売り込むのは効果的ではない”
何故ならwebサイトを必要としていないことも考えられるからです。

ではどうすればいいのか?

“課題形成前のクライアントに対して効果的なものにはインバウンドとアウトバウンドの2種類に分けることができる”
インバウンドとは役立つことをして自然に見てもらうことを指すのに対し、アウトバウンドとは、お金をかけて広告を出稿したり、イベント展示会に出たりすることを指す。
企業によって、かけることのできる予算・規模が異なるため、どちらが正解というのはないようですが、規模の小さい会社ほど課題形成前のクライアントに対しては、クライアントにとって役立つことをして覚えてもらうことをしなければならないそうです。
規模の小さい会社ほどインバウンドを意識する事を推奨していました。

インバウンドに関しては一見“成果を出しづらいのでは?”と思うかもしれませんが、Twitterでの施策など、やりようはいくらでもあります。
ちなみに枌谷さんはオウンドメディア、具体的には社長ブログなどで成果を出したそうです。

驚くべきことに、去年一年間で400件の問い合わせを獲得したそうですが、そのうちの1割がブログ経由からだったそうです。Googleアナリティクスの計測データの有効期限は90日であるため、もしかしたら1割以上の問い合わせ数だったかもしれません。

多くの問い合わせを獲得したという社長ブログだそうですが、意識したのは更新頻度ではなく“内容の濃さ”だったそうです。

“更新頻度はよく意識されがちだが、あまりおすすめしない”
実際に社長ブログに関しては半年間更新されないこともあるそうです。それよりもユーザーの満足度すなわちページ滞在時間を意識されているそうです。
オウンドメディアの他にも、如何にしてSNSで大きな反響を得るかを考え、これもまた内容重視の投稿を行ったそうです。
SNSに関しては“32文字以内に収める・社名は載せない”など枌谷さん独自の手法があるそうです。

“ブログ用にコンテンツを作るのは無理がある”
ブログに関してはブログを書くためにコンテンツを作るのではなく、お客様に話した内容をブログに書くスタンスをとっているそうです。
他にも空き時間を利用して書くなどの工夫をしているそうです。
内容の濃いブログを見て反響を獲得したユーザーから問い合わせが来ることもあるそうです。

“内容を意識したコンテンツは、インフルエンサーによって業界内でシェアされ、広がっていく”
インフルエンサーの存在が成功に大きく寄与したそうです。

あくまでweb業界ならではのやり方かもしれませんが、業界の人にとって役立つ情報を公開しつつ、間接的に企業担当者に名前を知らしめるというのがブログの戦略としては重要ということでしょう。

まとめ

非常に参考になるセミナーでした。個人的には、今回のセミナーの中でも一番参考になりました。会社のスタンスとしては目先の利益よりもサービスの質にこだわるクリエイティブ色の強い印象を受けました。中でも、オウンドメディアの中でも自社ブログからの反響が多いようですが、更新頻度ではなく内容の濃さを重視しているというのは正直なところ驚きました。また、SEO的な観点から見て外部施策においても、量より質を重視するようになってきていることを教えてくれる内容でした。
規模の小さい会社がここまで依頼を獲得した理由として、代理店に頼らず自社の強み・会社内でできることの探求・社員の育成に力を入れたからこそ得られた結果なのではないでしょうか。web制作への思いが伝わってくるセミナーでした。

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